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ビジネスヒント·11分

「もう1人雇えばいい」が一番もろい選択肢になる理由

Omago 編集部·
人を1人雇うか一次対応を自動化するか、人手不足の日本の中小企業が比較検討するイメージ

人手が足りないとき、多くの経営者がまず考えるのは「もう1人雇えばいい」です。けれど今の日本では、それが一番もろい選択肢になりかねません。2025年の人手不足倒産は427件、その77.0%が従業員10人未満の小さな会社でした。この記事では、なぜ「採用」が思うほど安全策ではないのか、そして反復的な一次対応を自動化して人を高付加価値な仕事に回す考え方を、データと一緒に整理します。


なぜ「もう1人雇う」が日本の中小企業で一番もろい選択肢なのか

採用が一番もろいのは、そもそも採れない・続かない・辞めた瞬間に業務が崩れる、という三重のリスクを同時に抱え込むからです。「1人増やす」は解決のように見えて、実は会社の存続を1人の人間に賭ける行為になりがちです。

まず「採れない」。帝国データバンクの2026年1月調査では、正社員が不足している企業が52.3%、非正社員が不足している企業が28.8%にのぼります。業種で見るとさらに深刻で、非正社員の不足率は飲食店で58.6%、食品小売で50.0%、ホテル・旅館で44.0%。医療・福祉・保健衛生では正社員の不足率が57.4%です。求人を出しても、市場に人がいないのが現実です。

次に「続かない」。厚生労働省の調査では、2024年のパートタイム離職率は宿泊・飲食サービスで29.9%、卸売・小売で21.3%、医療・福祉で22.2%。3人雇えば1人近くが1年で抜ける計算です。雇うたびに募集費・教育・シフト調整・品質のばらつきを繰り返し負担することになります。


採用が「もろい」ことを示すデータは何か

最ももろさを物語るのは倒産データです。人手不足倒産は2024年の342件から2025年は427件へと24.9%増、年度ベースの2025年度では441件に達しました。

特に小さな会社ほど直撃しています。2025年の人手不足倒産のうち77.0%が従業員10人未満。大企業がKPIを外した話ではなく、1人の退職や1回の採用遅れが日々の営業を止めかねない規模の事業者の話です。

さらに見過ごせないのが「従業員退職型」の増加です。誰かが辞めた衝撃を会社が吸収しきれず倒れるケースが、2024年の90件から2025年は124件に増えました。つまり「採れなかった」だけでなく「いた人が抜けた」ことで倒れる会社が増えている。1人の採用にすべてを賭ける構造そのものが、いま危ういのです。

求人を出しても市場が応じてくれない点も数字に出ています。2025年上半期、宿泊・飲食サービスの欠員率は4.8%と全産業で最高、未充足求人は医療・福祉で24.69万人、宿泊・飲食サービスで21.93万人に達しました。雇うと決めても、すぐには埋まらないのです。

この背景は人手不足倒産そのものを掘り下げた記事でも詳しく扱っています。あわせて人手不足倒産とAIによる一次対応をご覧ください。


1人雇うコストは本当はいくらか

「人件費は時給だけ」という前提を外すと、採用は思った以上に高い固定費だと分かります。賃金の下限自体が短期間で大きく動いているからです。

最低賃金の全国加重平均は2024年度の1,055円から2025年度は1,121円へ、66円・6.3%の上昇。主要地域では東京1,226円、大阪1,177円、愛知1,140円、福岡1,057円です。しかも上昇は一度きりではありません。中小企業の賃上げ率も、商工会議所の調査で正社員4.03%(2025年春)→4.73%(年度後半)、従業員20人以下でも3.54%→4.02%と上がり続けています。連合の2026年春闘でも300人未満の組合は賃上げ4.84%。最低賃金で採っても、環境は上向き続けるのが前提になります。

そして時給に乗るのは社会保険の事業主負担です。東京の最低賃金1,226円を起点に、健康保険・厚生年金・子ども子育て拠出金・雇用保険の事業主負担を足すと、保険加入のパートで時給の実負担はおよそ1,410円が下限の目安になります(公的な料率からの試算で、政府が出す「一律の人件費」ではありません)。この水準だと、一次対応に月80時間を充てるだけで約11.3万円、月120時間で約16.9万円、月160時間で約22.6万円。ここに募集費・制服・教育・シフト調整・管理者の手間は含まれていません。実際の人的コストは、これより高くなるのが普通です。

夜間はさらに高くつきます。22時〜5時は深夜割増25%以上が法定で乗り、月60時間超の残業は割増が50%に、それが深夜にも重なると合計75%に達します。東京の法定下限だけで見ても、深夜帯は時給約1,533円、60時間超残業の深夜帯は約2,146円。「24時間、人が対応する」は「24時間、AIが一次対応する」とはまったく別の経済性なのです。


どの問い合わせを自動化し、どれを人に残すべきか

答えはシンプルです。反復的で・定型的で・低リスクで・時間に追われる問い合わせは自動化し、感情的・例外的・判断が重い・関係性が大切なやり取りは人に残す。これが日本の中小企業にとって一番守りやすい線引きです。日本では丁寧さとおもてなしへの期待が高いぶん、節約のために雑な印象を与えたくない、という事情もあります。

まず自動化に向くのは、次のような問い合わせです。

  1. 営業時間・定休日
  2. 場所・アクセス・駐車場・地図リンク
  3. 予約の取り方・必要な情報・受付できる時間帯・キャンセル規定
  4. 在庫や空き状況(構造化されたデータと連携できる場合)
  5. 価格帯・メニューやサービスの選択肢・支払い方法・配達エリア・チェックイン規定
  6. 営業時間外の受け付け確認と、次のステップへの振り分け

これらはまさに、人手不足が顕著な飲食・食品小売・ホテル・福祉関連で繰り返し発生する、差別化につながりにくい労働です。

一方、人が先に立つべき(少なくとも人の承認が必要な)のは次のような場面です。

  • クレーム、返金トラブル、怒りや不安を抱えたお客様への対応
  • 個別判断が必要な例外的なケース
  • 高単価の相談営業や、関係性に配慮したアップセル
  • 個人情報・本人確認・特別な配慮を伴う依頼
  • 医療や介護に関わる、ニュアンスや注意義務が問われる会話
  • 常連やVIPなど、人の返信そのものがブランドになる場面

考え方は「おもてなしを消すために自動化する」のではなく「おもてなしを守るために自動化する」です。「何時から開いていますか」「予約できますか」「駐車場はありますか」に貴重な人手を割くのではなく、謝罪・安心・説得・例外対応・評判管理に人を残す。費用対効果の詳しい試算はAI顧客対応の損益分岐で、多言語が絡む宿泊の現場での具体例は小規模宿の多言語AIで扱っています。


自動化は採用の「上位互換」ではない——正直な限界

ここは正直に書きます。自動化は採用の完全な代わりにはなりません。AIが得意なのは定型的な一次対応であって、複雑な交渉や、繊細な気配りが要る場面ではありません。

AIにできるのは、問い合わせの山のうち判断のいらない部分を引き受け、夜間・休日の即時の一次返信を、人を夜勤に縛りつけずに実現することです。深夜帯の時給が法定下限だけで約1,533円に上がる日本では、これは小さくない利点です。残業も原則月45時間・年360時間が上限である以上、低判断の問い合わせをAIに逃がせば、限られた人を延長対応に押し込む必要が減ります。

ですから正しい問いは「人かAIか」ではありません。「どの仕事を人に残し、どの仕事をAIに任せるか」です。採用が機能する場面では採用し、採れない・続かない・夜間や週末の対応が割に合わない部分を自動化する。両方を組み合わせるのが、もろさを減らす現実的な答えです。

なお、Omago は、WhatsApp・Telegram・Web チャットで中小企業の顧客対応を自動化する AI エージェントプラットフォームです。

よくある質問(FAQ)

人を採るより本当にAIの方が安いのですか?

場面によります。保険加入のパートを東京で雇うと、事業主負担込みの時給はおよそ1,410円が下限の目安で、月80時間で約11.3万円かかります。反復的な一次対応をAIに任せれば、この人件費と募集・教育・離職のリスクを同時に減らせます。ただし複雑な対応や繊細な接客は人が担うべきで、AIは「安い人材」ではなく「採用のもろさを減らす保険」と捉えるのが適切です。

なぜ「もう1人雇う」がもろい選択肢なのですか?

採れない・続かない・辞めた瞬間に崩れる、という三つのリスクを同時に抱えるからです。非正社員の不足率は飲食58.6%・ホテル44.0%、宿泊飲食のパート離職率は29.9%。さらに2025年の人手不足倒産427件の77.0%が従業員10人未満でした。1人の採用に会社の存続を賭ける構造そのものが危ういのです。

どの問い合わせから自動化すべきですか?

営業時間・場所・駐車場・予約の取り方・キャンセル規定・価格帯など、定型的で繰り返し発生する質問からです。これらは差別化につながりにくく、人手不足が深刻な業種ほど件数が多い領域です。クレームや例外対応、医療・介護に関わる会話は人に残してください。

夜間や休日の対応もAIに任せられますか?

一次対応は任せられます。22時〜5時の深夜は法定で割増賃金がかかり、東京では法定下限だけでも時給約1,533円に上がります。AIなら人を夜勤に縛りつけずに、夜間・休日の即時の一次返信と振り分けができます。最終的な判断が必要な案件は、翌営業日に人へ引き継ぐ運用が現実的です。

自動化するとおもてなしが失われませんか?

むしろ守るために使います。「何時に開いていますか」のような定型対応をAIに逃がせば、謝罪・安心・説得・例外対応といった、人にしかできない場面に時間を回せます。おもてなしを消すためでなく、守るために自動化する、という考え方が日本の現場には合っています。


出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)」2026、「人手不足倒産の動向調査(2025年)」2026、「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」2026、「『従業員退職型』の倒産動向(2025年)」2026、厚生労働省「令和7年上半期雇用動向調査結果の概況」2025、「令和6年雇用動向調査結果の概況」2025、「令和7年度 地域別最低賃金 全国一覧」2025、東京商工会議所・日本商工会議所「中小企業の賃金改定に関する調査」2025、連合「2026春季生活闘争 第4回回答集計結果」2026

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