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業界インサイト·11分

「星5で割引」は措置命令の対象に——Google口コミ依頼の二重規制(景表法×Googleポリシー)を一次情報で線引きする

Omago 編集部·
景品表示法ステマ規制とGoogleビジネスプロフィールポリシーの二重規制のもとで、Google口コミ依頼のOKとNGを線引きする比較図

「星5を付けてくださったら、お会計から割引します」——数年前まで珍しくなかったこの声かけは、いまでは行政処分の対象です。景品表示法のステルスマーケティング規制(ステマ規制)は2023年10月1日に施行され(消費者庁)、高評価を条件にした特典提供にはすでに複数の措置命令が出ています。しかも規制は一つではありません。Googleビジネスプロフィールのポリシーは景表法よりさらに厳しく、「割引と引き換えの口コミ依頼」そのものを禁止しています。

口コミが集客の生命線であることは数字が示しています。飲食店選びで約95%が口コミを参考にする(株式会社mov調査、2024年)という環境では、「口コミを増やしたい」と考えない店舗のほうが少数派でしょう。問題は、その増やし方です。この記事では、消費者庁のQ&AとGoogle公式ヘルプという一次情報だけを根拠に、「どこまでがOKで、どこからがNGか」の線を引き、措置命令の実例と、安全な依頼テンプレートまでを整理します。


景表法のステマ規制とは何か?なぜ口コミ依頼が規制されるのか?

ステマ規制とは、「事業者の表示(広告)であるにもかかわらず、一般消費者にはそれと判別できない表示」を景品表示法の不当表示として禁止する規制です。2023年10月1日に施行され、規制の名宛人は広告主である事業者側(消費者庁)です。

ここで押さえるべき点が2つあります。第一に、処分を受けるのは投稿した顧客やインフルエンサーではなく、依頼した店舗・企業です。「お客様が自分の意思で書いた体裁だから大丈夫」という理屈は通りません。事業者が投稿の内容に関与していれば、それは「事業者の表示」になります。第二に、口コミそのものが悪いわけではありません。規制されるのは「広告なのに広告と分からない見せ方」であって、顧客が自由意思で書いた正直な感想は、規制の対象外です。

つまりこの規制は「口コミを集めるな」ではなく、「口コミの中身を金や特典で操作するな」というルールです。線引きの実際は、消費者庁が公表しているQ&Aに具体例があります。


どこまでがOKで、どこからがNGなのか?——消費者庁Q&A「Q6」の微妙な線

分かれ目は「事業者が投稿の内容に関与しているかどうか」です。消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」(2023年)のQ6は、実務上もっとも重要な線引きを示しています。

  • 通常はOK:口コミの投稿を条件にサービスを割引価格で提供する——ただし、投稿の内容について何も指示しない場合。顧客が自分の判断で自由に書くなら、その投稿は通常「事業者の表示」に当たらず、告示違反にはなりません。
  • NG:投稿にあたり「星5を付けること」を条件とする場合。星の数を事業者が決めている時点で、投稿内容を事業者が決定したことになり、「事業者の表示」に該当します。広告である旨の明瞭な表示(「PR」等)がなければ告示違反です。
  • NG:星の指定がなくても、「品質や価格を推奨するコメントを書くこと」を条件とする場合も同様です。

要するに、景表法上の線は「割引を出すかどうか」ではなく「内容に口を出すかどうか」で引かれています。この微妙さが現場の誤解を生みやすく、「星5とまでは言っていないから大丈夫」「高評価『お願いします』と添えただけ」といった運用が、後述の措置命令の事案と紙一重になっています。


実際に措置命令は出ているのか?

出ています。しかも最初の事案は、中小規模のクリニックでした。

2024年6月6日、消費者庁は医療法人社団祐真会(マチノマ大森内科クリニック)に対し、ステマ告示にもとづく初の措置命令を出しました(消費者庁、2024年)。Googleマップに星4か星5の口コミを投稿することを条件に、インフルエンザワクチン接種費用を550円割り引くという内容で、45件の口コミが違反と認定されました(ITmedia、2024年)。550円という小さな割引でも、星の数を条件にした時点で違反になる——これが第1号事案の教訓です。

さらに2025年3月17日には、歯科矯正を手がける医療法人社団スマイルスクエアに対して、ステマ告示では4件目となる措置命令が出ています。星5の投稿を条件に5,000円分のQUOカード提供または5,000円の治療費割引を行っていた事案です。初事案から1年足らずで執行が積み重なっており、「摘発されるのは大企業だけ」という見立ては成り立ちません。なお、いずれも医療機関の事案である点は偶然ではなく、医療業界には医療広告ガイドラインという別の規制層もあります。クリニック・医療系事業者の方は、医療広告規制とAI対応の論点を整理した解説記事もあわせてご覧ください。

罰則も軽くありません。措置命令に従わない場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金が科され得ます(景品表示法46・47・49条)。命令自体が事業者名とともに公表されるため、金銭的な罰則以前に、「口コミを買っていた店」として記録が残ること自体が最大のダメージです。


Googleのポリシーは景表法とどう違うのか?

結論から言うと、Googleのほうが厳しいです。景表法のQ6が「内容指示なしの割引提供なら通常OK」としている行為も、Googleのポリシー上は禁止されています。

Googleビジネスプロフィールの「禁止および制限されているコンテンツ」ポリシー(Google公式ヘルプ)は、販売者に対して次の行為を明確に禁止しています。

  • 口コミの投稿、または否定的な口コミの修正・削除と引き換えに、金銭・割引・無料の商品やサービスなどのインセンティブを提供すること(内容を指示するかどうかにかかわらず、対価付きの口コミ収集は全面的に禁止)
  • 顧客による否定的な口コミの投稿を妨げ、肯定的な口コミだけを選択的に募ること(いわゆるレビューゲーティング)
  • 口コミの依頼時に、その場での評価・投稿を強要したり、特定の内容(スタッフ名など)を含めるよう依頼したりすること
  • 競合他社を貶めるコンテンツを投稿すること

執行の仕組みも強化されています。2024年7月には、違反口コミの削除にとどまらず、ビジネスプロフィール自体を制限し、プロフィール上に消費者向けの警告(アラート)を表示する中間措置が導入されました。ローカル検索からの集客が生命線の店舗にとって、プロフィールに警告バナーが出ることは、措置命令とは別種の、しかし即効性のある打撃です。

つまり口コミ依頼には二重のチェックポイントがあります。景表法(違反すれば措置命令・公表)と、Googleポリシー(違反すれば口コミ削除・プロフィール制限)。「景表法ではセーフ」でも「Googleではアウト」の領域が存在するため、実務ではより厳しいほうに合わせるしかありません。


実務では、どう口コミを依頼すればよいのか?

答えは一つに絞れます。「対価なし・内容指示なしで、正直な感想を依頼する」——これが景表法とGoogleポリシーの両方を満たす唯一の安全圏です。

声かけやメッセージのテンプレートは、次のような形が基準になります。

「本日はご利用ありがとうございました。よろしければ率直なご感想をGoogle口コミでお聞かせください。ご投稿はお客様の自由意思でお願いいたします」

対価を出さず、星や内容にも触れず、投稿しない自由も明示する。地味ですが、これが一次情報から導ける結論です。主な行為の判定を一覧にすると、次のようになります。

行為 判定 根拠
「率直なご感想をお願いします」(対価・内容指示なし) OK 消費者庁Q&A Q6
口コミ投稿を条件に割引(内容・星の指示なし) 景表法上はほぼOK ※ 消費者庁Q&A Q6前段
「星5を付けたら割引」 NG(景表法違反) 消費者庁Q&A Q6後段・2024年措置命令
「高評価コメントを書いたら特典」 NG(景表法違反) 消費者庁Q&A
インセンティブ付き口コミ収集全般(金銭・割引・無料商品) NG(Googleポリシー) Google禁止コンテンツポリシー
否定的口コミを妨げ、高評価者だけに投稿を促す NG(Googleポリシー) レビューゲーティング禁止
口コミ代行業者への外注 NG 景表法・Googleポリシー双方
従業員に自店の高評価口コミを投稿させる(関係非明示) NG ステマ規制の対象
AIで返信の下書きを作成し、個別の一文を添えて投稿 OK Googleポリシー上の禁止規定なし

※ 景表法上は通常違反にならなくても、Googleポリシーはインセンティブ付き口コミを全面禁止(Google公式ヘルプ)しているため、Googleマップ上での「割引と引き換えの口コミ依頼」にはプロフィール制限のリスクが残ります。実務では避けるのが安全です。

なお、口コミや質問への対応の中で顧客に個人情報や機密情報の提供を求めることもGoogleのポリシーで禁止(Google公式ヘルプ)されています。「詳細はお名前と電話番号を口コミ返信欄にご記入ください」といった誘導は、善意でもポリシー違反になり得ます。


口コミ返信のAI自動化はポリシー違反にならないのか?

なりません。AIで返信の下書きを作成すること自体を禁じる規定は、Googleの口コミ関連ポリシーには存在しません。規制されているのは「口コミの中身を対価で操作すること」であって、「返信を効率化すること」ではないからです。

ただし、安全に運用するための設計条件が3つあります。第一に、全件同一のコピペ定型文を避け、口コミの内容に触れる個別の一文を必ず添えること。第二に、返信は投稿者本人だけでなく「その返信を読む次の見込み客」に向けて書くこと。第三に——本記事の文脈ではこれが最重要ですが——自動化された返信や依頼メッセージに、インセンティブを示唆する文言(「次回割引しますので高評価を」等)を絶対に含めない設計にすることです。テンプレートに一度でも違反文言が紛れ込むと、自動化はそれを何十件にも複製します。手作業のミスは1件で済みますが、自動化のミスは構造化されるのです。低評価への返信の組み立て方は、口コミ返信の戦略を4ステップで解説した記事で詳しく扱っています。

Omago(オマゴ)は、中小企業の顧客対応を自動化するAIエージェントプラットフォームです。事業者が承認した自社の情報にもとづいて、問い合わせへの一次対応や返信文の下書きを自動化し、対応の抜け漏れを減らします。もっとも、どのツールを使うにせよ、インセンティブ文言を含めないルール作りと、顧客との対話データの適法な取り扱いは事業者側の責任です。後者については個人情報保護法(APPI)のAI顧客対応チェックリストを参照してください。口コミの二重規制とAPPIは、AIで顧客接点を運用する事業者が同時にクリアすべき2つの関門です。


よくある質問(FAQ)

割引と引き換えに口コミを依頼するのは違法ですか?

投稿の内容や星の数を指示しない限り、景表法のステマ規制上は通常違反になりません(消費者庁Q&A Q6)。ただし「星5を条件」「高評価コメントを条件」にした瞬間に違反となり、実際に措置命令が出ています。さらにGoogleのポリシーは内容指示の有無を問わず、対価付きの口コミ収集そのものを禁止しています。景表法とGoogleの両方を考えると、割引と引き換えの依頼は行わず、対価なしの正直な感想依頼に統一するのが安全です。

従業員や家族に自店の高評価口コミを書かせるのは問題ありますか?

問題があります。事業者と関係のある人物が、その関係を明示せずに投稿する行為は、一般消費者に「第三者の感想」と誤認させる典型的なステマであり、景表法ステマ規制の対象になり得ます。Googleのポリシー上も、利害関係にもとづく口コミは削除対象です。「自作の口コミで星を底上げする」のではなく、実際の顧客に正直な感想を依頼する運用に切り替えてください。

口コミ代行業者に「星5の口コミを増やします」と営業されました。使ってよいですか?

使うべきではありません。金銭を対価に口コミを作成・投稿させる行為は、Googleの禁止コンテンツポリシー(Google公式ヘルプ)に明確に違反し、口コミの削除だけでなくプロフィール制限・消費者向け警告表示のリスクがあります。景表法上も、事業者が内容に関与した投稿として措置命令の対象になり得ます。業者が処分されるのではなく、依頼した店舗側が名前を公表されて処分される点に注意してください。

事実と異なる悪い口コミは削除できますか?

原則として、気に入らない口コミを店舗側の判断で削除することはできません。削除を申請できるのは、誹謗中傷・虚偽・無関係な内容など、Googleのポリシーに違反する口コミを報告する場合(Google公式ヘルプ)に限られます。また、削除と引き換えに投稿者へ金銭や特典を提供する「火消し」はポリシー違反です。現実的な対応は、事実確認の姿勢を示す冷静な返信を、次の見込み客に向けて書くことです。


免責事項:本記事は2026年7月時点の一次情報にもとづく一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の事案については、弁護士または消費者庁・個人情報保護委員会等の相談窓口にご確認ください。本文中の措置命令に関する記述は、消費者庁の公表資料および報道にもとづく事実の紹介です。

出典:消費者庁 ステルスマーケティング規制関連資料・Q&A・措置命令公表資料(2023〜2025年)、Googleビジネスプロフィール ヘルプ(2024年)、ITmedia(2024年)、株式会社mov 調査(2024年)

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